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広島高等裁判所岡山支部 昭和37年(う)24号 判決 1962年5月10日

被告人 池田僥一

主文

本件控訴を棄却する。

理由

控訴趣意第二点について

所論は要するに、原判決は法令適用の誤をおかしている。即ち被告人はその供与を受けた金額合計四六、〇〇〇円のうち、三九、〇〇〇円程を他に供与しているのであるから、右四六、〇〇〇円全額について追徴を言渡した原判決は失当であるというのである。

しかし記録を精査し、原判決挙示の各関係証拠に徴すると、被告人は武藤千秋からいずれも選挙運動の報酬、運動資金等として包括的にその処分を一任されて原判示第一の如く合計金四六、〇〇〇円の供与を受け更に独自の裁量に基き原判示第二及び第三の如く各供与したものであることが認められる。そしてかような場合は被告人からその受領金額の全部を没収又は追徴すべきが相当であつて、たとえ所論のように右受領金額の中から、更に他の者に供与したものとしても、該金員は畢竟被告人の利益において費消されたものであるということができるから、被告人より追徴するも何等違法ではない。従つて原判決が被告人の受領金額全部について没収することができない場合他に供与した金額を控除することなくして、追徴を命じたとしても何等違法のかどはない。論旨は理由がない。

(その余の判決理由は省略する)。

(裁判官 尾坂貞治 浅野猛人 西尾政義)

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